2008-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『忘却症のための記憶』(10)

それでも鳥は血の籠から立ち上がって、わたしにその約束を尋ねはじめる。「わたしは籠の中の開かれた場所にいるのですか?」 わたしはベイルートを通り過ぎて、羽根でできた籠を見る。1980年のことだ。わたしの詩は挑発的で冷笑的だった。わたしはただのよそ…

『忘却症のための記憶』(9)

真空爆弾。ヒロシマ。ジェット機での人狩り。ベルリンでナチ兵士によって征服された残りのもの。ベギンとネブカドネザルの個人的紛争の火花。見出しは過去と現在がごちゃまぜになり、そして現在を急かすように駆り立てる。未来はくじになって売られている。…

『忘却症のための記憶』(8)

この1時間ほど、わたしは友人Zと言葉を交わしていない。かれはあてもなく車をぐるぐると走らせている。「どこにいるんだ?」。わたしたちは互いに尋ねあった。「どこにいたかは知ってるよ」。わたしは言う。「本当のことを教えろ。パイロットの奥さんに何か…

『忘却症のための記憶』(7)

外国人ジャーナリストたちが根城にしているホテル・コモドアで、アメリカ人記者がわたしに質問する。「この戦争の最中に何を書いているのですか、あなたのような詩人は?」 ――わたしの沈黙を書いています。 ――いまは銃がものを言うときだということでしょう…